だいじょうぶだいじょうぶ

だいじょうぶ だいじょうぶ (講談社の創作絵本)
いとう ひろし
講談社
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幼い頃の記憶は、ずっとそのヒトを支え続けるように思う。

自分の中のぽっかりぬけている部分が、
不安を増させていることがある。
それがなぜぽっかりしているのか、
恐怖で押さえられているのか、
ただ記憶が埋まっているだけなのか、
今となってはわかり得ないのだけれど。

たとえば、あるメロデイがふいに耳に入ってきて、
それを聞いていた頃の感覚がよみがえってきた時とか、
すごく安堵する。
草をちぎった時のつんとくる匂いとか、
雨の日のもわっとした空気の感触とか。
そんなふいの何かが、
情景やその時のココロを一気にぱあっと甦らせる瞬間がある。

埋もれた記憶を引き出すパーツが多いのは幸せだと思う。
その時をしっかり生きていたのだ、という事を体はちゃんと記憶している。

それでも、時は早く流れすぎる。

小さな子どもに、その波のうねりはあまりに大きすぎて、
わけがわからなかったり、迷子になったり。
大人はその波乗りが少しでも上手にできるようになった分、
『だいじょうぶ、だいじょうぶ』と支えてあげたい。
『この時の流れの波は、ずっとずっと昔から続いているのだよ』と。

祖父母の暮らしていた田舎の旧家は、数える程しか行けなかったが、
そこにある『母の育った痕跡』も、わたしを安心させた。
その場所で祖父母が暮らし続けたことも。

この本を開くたびに、絵のやわらかさと、
「ぼく」の言葉の一言一言が、
まるくて、素直で、ストレートなことに少し困惑しながら、
天国の祖父母と過ごした時のわずかながらの情景を
必死でひっぱりだそうとしている自分に気が付く。

世代によって見るものも思うことも違い、
のっている波も違うかもしれないけれども、
その重なり合いがそのヒトを支え続けるような気がする。