かばくん

かばくん (こどものとも絵本)
岸田 衿子
福音館書店
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母親になってしまった….。このわたしが….。

そのゆるぎない事実を前にすっかり気持ちが固まってしまう日々。
子守唄を歌ってやる声もぎこちなさに満ちていた。

親戚から「かばくん」が届いたのはそんな頃だった。

ひとりで読んでみたけれど、
どこが良い本なのか、ちっともわからなかった。
なんでカメがいるの?
なにが言いたいの?
絵の輪郭の線は、ただ乱雑に見えるだけで、
その色彩もキャンバスや筆の質感も、よく理解ができなかった。

ふにおちないまま、娘に読んでやっていた。
お昼ねの前。
夜お布団に入ったとき。
毎日毎日、眠りにつく前に読んでやった。

夢中で本に見入る娘の傍らで、
読んでやっている自分が発している声の抑揚や、韻の具合が、
なんとも心地よいことに気がつきはじめた。

そして、かばのことを思った。

もうだいぶ本物のかばなど目にしていなかった。
でも私の中の「かば」は、こんなごつごつの皮膚をしていて、
目はリアルだけれどもおっとりしていて、
圧倒的に大きくて、のそりのそりとしていて、
きっと朝寝坊にちがいないと思うことに、
間違いがなくておどろいた。

わたしはこの「かばくん」ではじめて、
絵と言葉が一体となって発せられる、絵本の力というものを
実感したのだった。