だるまちゃんとてんぐちゃん

だるまちゃんとてんぐちゃん(こどものとも絵本)
加古 里子
福音館書店
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こどもにはこどもの性質というものがある。
こどもはすぐうらやましがるものだし、
親にお願いしたことを違うふうにされると、こどもは怒るものである。

「てんぐちゃんの ような うちわが ほしいよう」
「てんぐちゃんの ような ぼうしが ほしいよう」
「てんぐちゃんの ような はきものが ほしいよう」
なんてわがままいわれたら、ほっておくだろうな、わたしなら。

家族総出で必死になってだるまちゃんの相手をするところが、
だるまちゃん一家のすばらしいところ。
とうちゃんはスネ毛ぼうぼう、かあちゃんや妹はまるでおかめさんやおたふく。
さしていえば、じい様は仙人のようで、ばあ様は手足がしわしわ。
このほのぼのさが、加古里子ワールド!

てんぐちゃんの穏やかな性格がこのお話をなごませているということを忘れてはいけない。
だるまちゃんがさんざんてんぐちゃんの鼻を「うらやましい」といっていたのに、
「すずめが とまるなんて だるまちゃんの はなは いちばん いい はなだね」
と最後にいい放つてんぐちゃんに完敗である。

作家として「絵本をつくる」意義というのは、
たとえばアーテイストとしてのひとつの表現であったり、
自分の世界感を形にする作業であったり、と、それぞれだと思うのだけれど、
その絵本を読むであろう「こども」の感受性をこれほど深く理解している作家さんは
いないだろう、と思う。
昔軍人を心ざしたことを後悔しておられる加古さんは、
こどもが賢く育っていくお手伝いをすることを、生きていくことの証と考えているという。

絵本のかたちにしたときのかっこよさや、
文、絵の洗練さ、などというものだけにとらわれることなく、
ひたすらにこどもと向きあう姿勢が根底にある。
全く無駄がなく、素朴で、ストレートで、
最終的にその絵本は、大きな包容力を持ってこどもにうったえかける力を持つ。

それら吸収したことが、大きくなったときにどれだけ支えになってくれるかを
わたしはおとなになってようやく気付いた気がする。
加古里子さんの著作は膨大な数にのぼる(図書館で検索して驚いた)が、
こどもの「知りたい」への探究に、ていねいに向き合ってくれる本も多く、
こどもにとって同じ同士としての心強さを与えてくれるキャラクターもたくさんいると思う。
読んでいると心から安心する。
尊敬してやまない作家さんである。