ルピナスさん―小さなおばあさんのお話

ルピナスさん―小さなおばあさんのお話
バーバラ クーニー
ほるぷ出版
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絵本作家ターシャテューダーが、
電話を発明したグラハム・ベルが種をポケットに入れて持ち歩き、行く先々で種を蒔いたために
ルピナスの花がアメリカ中に広まったと言っていた。

バーバラクーニー作「ルピナスさん」で人生が描かれている女性「ミス・アリス・ランフィアス」も
人生の終盤、村にルピナスの種をまき続け、村をルピナスの花でいっぱいにした。
「ルピナスさん」というのは、村のひとがそんなミス・アリスの姿につけた呼び名である。
空にむかってまっすぐに花をつけるルピナスの花には
いろいろな逸話があるのかもしれない。

この絵本をとおしてまず感じるのは「孤独」。
バーバラクーニーは、細い筆遣いで、
ミス・アリスの冷静に人生に向き合う姿勢を凛と描いている。

年を重ねたミス・アリスの「花のたねをまく」という行為よりも、
そこに至るまでの苦悩のほうに気持ちがいってしまう。

ミス・アリスの幼少期で、好きな場面がある。
おじいさんはいう。

「世の中を、もっとうつくしくするために、なにかしてもらいたいのだよ」。
「いいわ」なにをすればいいのかはわかりませんでしたが、アリスは
おじいさんにやくそくしました。

アリスはあさおきて、かおをあらって、ごはんをたべて、がっこうにいって、
かえってくると、しゅくだいをしました。

アリスはそうやってじきに、大きくなりました。

そういうもんなんだと思う。

この淡々とした物語のリズムも、
バーバラクーニーのすぐれたバランス感覚のなせる技のような気がしてならない。

あからさまに表現はされていないが、話にアリスの両親はでてこない。
アリスは環境を受け入れるのにも正直に、
そして自らの苦悩にも正直でいつづけようと努力をしていたのだろうと思う。
そういった流れでの物語の最後のページの文章も好きだ。
(是非ご一読ください。)

淡いパステルカラーのルピナスの花が随所に描かれることによって、
ミス・アリスの自立の過程での孤独がより際立ってみえるけれど、
ミス・アリスの姿には、美しさとほんのりとしたあたたかさが
どこか隙間から感じられる。
ちょっと心が弱ったときに、この本は本当に穏やかに力をくれる。
苦悩に満ちているときも、ちょっとまわりに気を配ると
美しいものが寄り添ってくれているものだとクーニーの絵から学ぶ。
南の島の人々のいきいきした表情。
最後にミス・アリスのお話をきく子供達のまなざしの素直さ。
(このバーバラの描き分け、なんとすばらしい!)
美しさをみつけ、感じられるかどうかは自分自身なのだろう。

この本に対する評論で、
「夢をもち、信念をもって人生をおくる女性のすばらしさを教えてくれる。
世界中を美しくすることはすばらしいこと」といった表現を目にすることがあるのだけれど、
どうかそのような安直な結論にとどまらず、
この「ルピナスさん」の物語が、真の意味で、
たくさんの女性の心に力を与え続ける存在であってほしいと願ってやまない。