おそとがきえた!

おそとがきえた!
おそとがきえた!
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角野 栄子
偕成社
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冬になると、雪・湯気・スープ・毛布…あたたかいモノが描かれた絵本を暮らしの中でぽっと思い出すようになります。くもった窓を指でこすり、外の天気の様子を伺うとき、いつもこの「おそとがきえた!」思い出します。童話作家の角野栄子、パリ在住の絵本作家市川里美のおふたりによる、「おだんごスープ」に続く作品です。

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左「おだんごスープ」(旧絵本日記2008.5はこちら)は、ひとりぽっちになった“おじいさん”のお話。
右「おそとがきえた!」は、ねこちゃんと暮らす“おばあさん”のお話。

「おだんごスープ」は、にぎやかでこどもに読んでも楽しいお話でしたが、「おそとがきえた!」は、しみじみとした読後感をもつ大人の絵本な気がします。どちらも、ある日起こるきっかけから、少しずつ明るい表情と元気を取りもどし、また1から暮らしを積み重ねていくお話です。

主人公、おばあさんの名前はチラさん。チラさんのおうちは大きな建物と建物のあいだで、小さくて、暗くて、空もみえません。おばあちゃん住宅に当選するのを待ちながら、ねこちゃんと暮らしています。

ある日スープを煮ていると、湯気がシューシュー、窓がくもって、おそとが見えなくなってしまいました。
「おそとなんかきえちゃったっていいわ」と、チラさんは真っ白くくもった窓に、指で絵をかきます。チューリップにおひさま、おおきな木、ブランコ…

春になったある日、念願の住宅抽選当選のおしらせが!チラさんとねこちゃんは、おひっこしをすることになりました。行き先は…

表紙はドキッとするほどさみしげな灰色の絵ですが、見返しのチェックのかわいいこと!澄んだ空の色、手書きのチェックはおばあさんの心に宿ったすがすがしい空気を表しているようです…。

市川里美さんは岐阜県出身、現在はパリ在住で、世界各国旅をされて絵本作品を生み出している方だそうです。キッチンリネンや、ストーブ、お鍋、ベッドのライト…素敵です。描写が生き生きとしていて、かつ目線が冷静なので、角野栄子さんの文に織り込まれたファンタジーな一節にも、独特の臨場感、妙なリアル感をもたらし、現実におばあさんがそこに暮らしているように感じさせられます。でも少し異国っぽくて、しゃれてて、ミステリアスな雰囲気が、大人心をくすぐります。

どんどん明るくなるチラさんの表情に、じわじわと心がゆるんでくるやさしい一冊です。

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